理事長 伊藤孝司 ご挨拶

2018.09.03

萩長門成年後見センター・萩長門成年後見支援センター「てとて」を同時開設して7年になりました。
今、ソーシャルワーカーとして成年後見事務の課題が明確になりつつあります。
ソーシャルワーカーの行動指針は「利用者の最善の利益(ベストインタレスト)」に寄り添うことです。
これは成年後見人としての指針とも同じはずです。
私は、相談支援センターでフィールドのソーシャルワーカーを15年ばかり経験しました。
この時は、ケアマネジメント技法に基づいて本人のフェルトなニーズを丁寧に引き出して、一緒に実現していくことに寄り添っていましたので、ブロックアウトされることはほとんどありませんでした。
しかし、成年後見人は裁判所から任命され、「代理権」を保佐人は「取消権・同意権」という権限をもって、財産の管理や本人がリスクを負わないための保護を責務とされています。

成年後見制度の権限は本人の権利擁護のために与えられたものであるはずです。
ところが、浪費する成年被後見人、被保佐人の方たちにとって、この権限は本人の意思ではない場合が多いように思えます。
親や兄弟から「将来のことを思ってこの制度を利用しなさい」とその時はしぶしぶ同意しますが、月日が経つと「自分のお金を自分が自由に使ってなぜ悪い」と抵抗し始めます。
そのうち預金が見る見るうちに目減りしていきます。
こうなると成年後見人、保佐人は支出に制限をかけざるを得なくなります。
すると、成年被後見人、被保佐人の方たちとの関係は当然に悪化してきます。
そして、ブロックアウトが始まるのです。
会いたいと言っても会ってくれません。
気が付けばキャッシュカードなどを作ってこっそり浪費している事例もあります。
ブロックアウトされれば、障害者相談支援事業所の相談員とネットワークを作ってアプローチしていくしかないのですが、障害者の相談支援体系は一般的な相談支援とサービス等利用計画となっており、ほとんどの相談員はサービス等利用計画の策定に忙殺され、福祉サービスを使わない利用者の一般的な相談支援は後回しとなるようです。
私も、成年後見人として相談員との連携を試みるのですが、ケア会議を開くにしても権限があるのかないのか迷いが生じます。
そこで期待されるのが、既に実施されている成年後見制度利用促進基本計画です。
この計画を総合的かつ計画的に講ずべき施策として、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりの整備・運営の中核となる機関が必要であるとし、「中核機関」の設置・運営を提言しています。
萩市、長門市においてもまさにこれだなと思っています。
考えてみれば、「てとて」は随分いろいろな機関から相談が入ってまいりましたが、「てとて」が機関として位置づけられていませんので、継続的にサポートできずにそのままになっている事例も多くあります。
成年後見制度利用促進基本計は平成33年度までということになっています。
早急に検討すべき課題だと思っているところです。

 
平成30年9月   
代表理事 伊藤孝司